
一般的なホームページ制作会社の探し方は、検索で探す、知人から紹介してもらう、まとめサイトを見る、などが挙げられると思います。そして見つけた制作会社の中から問い合わせ先を選ぶ際には、その制作会社のサイトに掲載されている情報を確認することになるでしょう。
しかし、漠然と「検索して探してサイトの情報を見る」だけでは、なかなか決定打になる情報が得られないのも事実です。では、具体的にどう探して、どう選べばいいのでしょうか。この記事では、目的や予算、会社の規模感を踏まえた制作会社の探し方・選び方を、実務的な視点からまとめていきます。
BtoB中小企業のコーポレートサイトをリニューアルしたい場合
BtoB中小企業にとって、コーポレートサイトは非常に重要な存在です。マーケティング活動の中心として、採用活動の窓口として、そして広報としての役割を担っています。だからこそ、常に改善が求められ、定期的なリニューアルの検討が必要になります。
ホームページ制作会社のトップページを見る
まず最初に確認すべきは、制作会社のトップページです。その会社はどんな強みがあって、どういう見られ方をしたいかは、トップページを見れば何となくわかります。逆に言えば、トップページを見て「この会社は何が強みなのか」が分かりにくい場合は、少し慎重に検討した方がいいかもしれません。見た目の印象や少しの文字情報だけで好印象を得られたのなら、それだけ伝達能力が高い会社であるという証明になるため、トップページは重要な判断ポイントになってくると思います。
制作実績とクレジット表記を確認する
ホームページの制作実績を見る際は、その制作会社が何をどこまで担当しているのかを確認することが重要です。特に注目したいのがクレジット表記です。マーケティング、デザイン、実装といった各工程の担当者を明記している会社は、制作そのものを大切にしている傾向があります。内製している範囲が分かったり、外部パートナーの名前を掲載しているケースもあり、いずれも透明性があって信頼できると感じます。
費用感を確認する
ホームページは規模や内容によって費用が変わるため、一律料金を提示していているところは多くありません。ただ、その制作会社の費用の相場を掲載していることはありますので、自社の予算感と合うかどうか確認しておくとよいでしょう。
地域で探す
同じ地域の制作会社に依頼することも選択肢の一つです。東京なら東京、福岡なら福岡といった具合です。何かあった時にすぐ相談できる距離感にいるというのは安心材料になりますし、費用感が大きくズレることもあまりないかと思います。
予算について
重要なのは、自社の規模感、予算、目的に見合った制作会社に依頼することです。中小企業のコーポレートサイトリニューアルでは、中規模の予算で進めるケースが比較的多く、それに対応できる制作会社も多く存在します。このボリュームゾーンであれば、選択肢も多く探しやすいでしょう。
一方で、その中規模のサイトなのに予算が限られている場合、対応してくれる会社を探すのは少し難しくなるかもしれません。目的や依頼範囲を絞って検討すると話はスムーズになるかと思います。逆に、非常に大規模なプロジェクトの場合も、対応できる会社は限られてきます。制作事例を見て、どのくらいの規模の案件を手がけているかを確認した上で問い合わせをするのがよいでしょう。
BtoB中小企業がマーケティングを強化したい場合
お問い合わせを増やしたい、オウンドメディアを作りたい、SEOを強化したい、などのマーケティング目的では、制作会社の選び方が少し変わってきます。この場合、デザインだけでなく、マーケティング視点を持つ制作会社や戦略設計ができる会社を選ぶことが重要です。実績を見る際も、見た目の品質だけでなく、どういう戦略で成果を出したのかを確認するといいでしょう。
ただし注意点があります。制作会社が事例で「大きな成果が出た」と紹介していても、その背景には相当な時間と予算がかけられている可能性もありますし、そもそもクライアントの状況が異なるため、同じ結果が得られるとは限りません。この点が判断を難しくしています。ランキングサイトやまとめサイトなどで掲載されている会社が必ずしも自社に合うとは限りませんので、実績の中身をしっかり確認して判断することをおすすめします。
取り急ぎホームページが必要な場合
起業直後、とにかくホームページが必要というケースがあります。この段階では、予算をかける必要はありません。自社で作成することも検討できる段階です。まずはコンパクトなものを作ることを優先し、完璧を目指さないというスタンスで進めるのがよいでしょう。ドメインだけは将来のことを考えて慎重に選び、サーバーもよく聞く名前の手頃なサービスを利用すれば問題ありません。マーケティングやデザインも最初の段階では深く考える必要はなく、会社情報、事業内容が掲載されているシンプルなページで十分です。
どのように発展させていくかは後から考えればいいので、まずは叩き台となるものを用意することを優先しましょう。そのあたりを相談にのってくれそうな制作会社が最適ですが、検索して探すのは難しいかもしれません。Xになれているのであれば、Xで相性の良さそうな制作会社(代表者)を探すのも一つの手段だと思います。
飲食店や美容室などショップのホームページが必要な場合
飲食店や美容室といったショップの場合、まず考えるべきは「ホームページが本当に必要か」という点です。店舗ビジネスでは、Instagramを中心とした情報発信と、Googleビジネスプロフィールへの情報登録が優先されるべき施策です。ホームページがなくてもビジネスをスタートできますし、Instagramで十分に情報を届けられます。
ただ、信頼性を高めるという観点では、簡易的なホームページがあってもよいとは思います。そして「取り急ぎホームページが必要な場合」と同様にあまりコストをかけずに取り組むことをおすすめします。店舗を立ち上げる際に多額の費用がかかっていて、その上でホームページに数十万円から数百万円をかけるのは現実的ではありませんし、避けた方がよいでしょう。
制作会社の選び方としては、近隣の会社に依頼するのがよいのではないでしょうか。何かと相談しやすいというメリットがありますし、地域のことを理解している制作会社の方が、近隣の競合状況を把握した上でマーケティングを総合的に考えてくれる可能性が高いと思います。
ランディングページを作りたい場合
ランディングページ(LP)に関しては、ランディングページ制作に特化した専門会社が存在します。そうした専門会社に依頼するか、通常のホームページ制作会社に依頼するかという選択肢があります。自社サイトを制作した会社と良い関係にあるのであれば、まずその会社に相談するのが最も適切だと思います。既存サイトとの整合性やデザインの統一感、マーケティング面を考えると、同じ会社に依頼するメリットは大きいでしょう。
クリエイティブに特化したサイトを作りたい場合
ブランディングを重視したサイト、採用サイト、プロモーションサイトなど、同業他社との差別化を図るために視覚的に印象的なサイトを作りたい場合は、Webデザインギャラリーサイトを活用するのが最も効率的な探し方になります。最近のギャラリーサイトには制作会社の情報も掲載されているところが多いため「このようなサイトを作りたい」と思った事例の制作会社を確認し、直接問い合わせをするのが近道です。
ただし、クリエイティブに力を入れたサイトは制作費用も相応にかかります。数百万円規模の予算が必要になることがほとんどで、100万円以下で視覚的に印象的なサイトを実現するのは難しいでしょう。ある程度の予算を確保できることが前提となります。
自社サービスのUI改善を依頼したい場合
自社でサービスを運営している企業がUIデザインを依頼したい場合は、UI設計に特化した会社または専門のデザイナーに依頼するのがよいでしょう。会社組織もありますが、UIに強いフリーランスのデザイナーの方も多く見られます。フロントエンド開発やバックエンドについてもある程度対応できる方も多いため、そうした方に依頼するのが適しているケースが多いと思います。探し方としては、依頼する側がある程度UIについて理解があれば、Xで探すのも有効です。
フリーランスへの依頼を検討する際の注意点
ここで、フリーランスへの依頼全般について触れておきます。デザインも実装も高いクオリティで、かつ単価も高すぎない、というフリーランスは意外に多く存在します。依頼する側の企業にとっても、制作会社にとっても、そういったフリーランスとは繋がっておきたいものです。ただし、いくつか課題があります。一つ目は、実力のあるフリーランスは常に忙しく、新規の依頼を受け付けられない状況にあることが多いという点です。二つ目は、そうした優秀なフリーランスを見つけること自体が非常に難しいという問題です。そのような方はフリーランスのマッチングサイトには必ずしも登録していないため、探すのが容易ではありません。
もちろんマッチングサイトにも優秀な方は多くいらっしゃいますが、実力があればあるほど忙しく、新規案件を受けてもらえない可能性が高いでしょう。そのため、地道に複数の方に声をかけ続ける、サイトの更新業務などから関係を築いていくといったアプローチが現実的になるかと思います。
ホームページだけで判断せず、担当者と話して決める
ここまでさまざまなケースについて説明してきましたが、重要な注意点があります。それは、制作会社のサイトに掲載されている情報だけで判断しないことです。「こう書いてあったのに実際は全く違った」「期待していた結果が得られなかった」という話は、有名な会社であっても耳にすることがあります。
最終的には、問い合わせをして担当者と実際に話してから判断する必要があります。ヒアリングの内容、温度感、自社への理解度など、総合的なものを踏まえて判断する必要があります。ホームページだけで判断するのは難しいので、担当者と話してみて、自社に合う会社かどうかを見極めることが大切です。
制作会社選びと同じくらい依頼の仕方も重要
制作会社を選ぶ際、見た目が重視されるプロジェクト、例えばデザイン性の高いサイトやランディングページといったものは、比較的依頼先を探しやすい傾向があります。完成イメージを視覚的に判断できるからです。
一方で、コーポレートサイトやマーケティング強化を目的とする場合、実際にどの程度の成果が出たのかをホームページから判断するのは簡単ではありません。制作会社が事例で大きな成果を紹介していても、その背景には多くの時間と予算が投じられている可能性もありますし、クライアントの状況が異なれば結果も変わります。
そして、制作会社選びと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、依頼の仕方です。ホームページ制作は製品を販売するビジネスではなく、人がサービスを提供するビジネスです。依頼の仕方によってアウトプットの質が大きく変わるため、いかに準備をして依頼するかが、制作会社を選ぶこと以上に重要かもしれません。「費用をかけたのに期待した結果が得られなかった」というケースでは、もちろん制作会社側に課題があることもありますが、依頼の仕方にも改善の余地があった可能性も考えられます。自社の目的と規模感を踏まえて最適な制作会社を選び、依頼の仕方も意識して進めることが、成功への近道となるでしょう。

