2016年4月26日

文字塾で明朝体のかな書体を制作した話

文字塾で明朝体のかな書体を制作した話

1年も前の話になりますが、字游工房の鳥海さんが主催する文字塾で明朝体のかな書体を制作しました。

文字塾とは、鳥海さんのもと各自の書体を1年かけて作り、展示会までを行う私塾です。私は3期生で、同期10人の半数近くがプロの書体デザイナーという環境で過ごしました。そのため最初からレベル差がありすぎて、かえって気が楽だったことを思い出します。

私が作った書体は「こうた」という、自分の息子の名を冠した明朝体です。躍動感があって、自由気ままな明朝体を目指しました。ただ、文字作りの素人が最初から独創的なものを作ろうとしてもまともな形になるとは思えないので、最初はヒラギノを模写したり、スタンダードな明朝体を書くところからスタートしました。制作の流れについては、展示会レビューの引用をどうぞ。

近年ではすっかりやらなくなってしまった「文字を手で書く」ということに慣れるために、あるいはつくりたい文字の骨格をつかむために、繰り返し鉛筆で文字を書き続ける。骨格がかたまったら、20mm角の大きさに筆で50音の文字を書く。ここでも、「筆で文字の形をつくる」ことに苦労を重ね、時間を費やす塾生もいる。 以降は、目指す書体にたどりつくまで、48mm角で形を調整したり、逆に小さいサイズでチェックしてみたり、あるいは一度デジタルデータ化して文章を組んでみて粗をチェックしたり。最初の「骨格を書き、20mm角に筆で50音を書く」過程以降の文字のつくり方は、各塾生によってさまざまだ

【引用元】☞ 10人が取り組んだ書体づくりの過程「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」

人によって多少異なりましたが、大体このような流れで進みました。私は筆が苦手だったので、筆で書いたものを鉛筆でトレースし、それをもう一度トレースしながら形を整える、という工程を繰り返していました。Illustratorでトレースしたのは半年以上も過ぎた頃で、それからGlyphsでフォント化し、できあがったフォントの文字組みに絶望します。そこからまたやり直しを繰り返し。一文字気になって修正すれば、そこから連鎖してこの文字のこの部分も、というループが止まりません。経験を積んだりコンセプトが明確であれば、もう少しスムーズにできたかもしれませんが「これ終わらないんじゃないか」とずっと思っていました。

文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―

そして最後に展示会。塾生の書体が展示されますが、これまでの制作の過程が積み込まれた制作ファイルも展示されました。これが圧巻の内容で、鉛筆や筆でのラフや、その時の作者の思いがびっしり書いてあり、このファイルだけでも見応えがある展示会です。おそらく、今年も4期生の展示会が行われると思いますので、興味のある方はぜひ見にいってみてください。

こうた

今年になってから「こうた」を少しづづ調整し始めました。いつかフォントデータを公開できればと思います。

第3期文字塾展「かなりこれはいい漢じ」特設ページ
10人が取り組んだ書体づくりの過程「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」
【速報レポート】「文字塾展」トークショー ● type.center
文字塾

執筆者:伊藤庄平/株式会社シロクロ代表取締役。1979年2月福岡県生まれ。2003年、熊本にてデザイン事務所ナインデザインを共同設立。上京し、2010年に株式会社シロクロを設立。社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)正会員。